● 日本疼痛学会について
日本疼痛学会(Japanese Association for the Study of Pain: JASP)は、山村秀夫教授(東京大学麻酔科)らが1971年から創った「痛みの問題研究会」、1979年からの「痛みの研究会」を経て1984年から「日本疼痛学会」として発展してきています。さらに、2018年には野口光一理事長の指導の下で一般社団法人化し、学会としての認知度と社会的な責任を持つ立場を高めることができました。現在、日本疼痛学会は発足から50年以上を経てより医学・医療などを通して社会に貢献していくことを目指しています。

我々の学会は、痛みの臨床と基礎研究の専門家が集まる場であり、その目的は痛みの科学的な理解を深め、研究成果を臨床現場に反映させ、痛みを抱える患者たちの生活の質を改善することにあります。現在、会員数は約700名で、麻酔科/ペインクリニック、脳外科、整形外科、心療内科、神経内科などの臨床医、理学療法士、リハビリ関係者、看護関係者、そして生理学・薬理学/薬学・解剖学等の基礎医学関係者が参加しています。我々は年に一度の学術集会を開催し、この場を通じて研究成果の発表と専門家間の交流を行っています。

学会の機関誌「Pain Research」は、2023年から国際化し全て英語で出版されるようになりました。これにより、日本の疼痛医学研究を世界へ発信する役割を果たすとともに、世界中の痛み研究の発表の場としての役割を拡大することを目指しています。

さらに、日本疼痛学会(JASP)は、国際疼痛学会 (International Association for the Study of Pain: IASP) の日本支部として、痛み診療や研究の世界的なリーダーシップを担っています。IASPの基本原則である多学科間治療(multidisciplinary treatment)は、多くの学問領域を横断的につないで行う疼痛治療を指します。この原則に従い、我々日本疼痛学会は多様な学問領域からの研究者を集め、臨床研究、基礎研究、社会医学研究等、疼痛に関する研究と深い議論を行います。
また今後、日本痛み関連学会連合など、広範な痛みに関わる関係団体との連携を図りながら、人々の健康への寄与を目指します。これらの活動を通じて、日本疼痛学会は痛みの科学的な理解を深め、その知識を臨床現場へと適用することで、痛みで苦しむ全ての人々に対して最高水準の治療を提供することを目指しています。これらの取り組みは、我々の学会が長年にわたって追求し続けてきた使命を具現化しており、これからも我々はこの使命を果たすために積極的な活動を続けたいと考えています。


一般社団法人日本疼痛学会 理事長
愛知医科大学病院 副院長(地域医療連携・構想、臨床研究推進担当)
愛知医科大学医学部疼痛医学講座・運動療育センター
牛田 享宏